東芝(東京都港区)は12月26日、リチウムイオン二次電池の開発・製造・販売を行う電池事業と、昇降機・照明・空調を扱うビルソリューション事業の強化を目的に、2019年4月1日付で東芝グループの組織運営体制を再編すると発表した。
東芝グループは11月8日に、2019年度から始まる中期経営計画「東芝Nextプラン」を発表していた。その中では、電池事業を新規成長事業に、ビルソリューション事業を注力領域にそれぞれ位置付けている。今回の組織運営体制の見直しにより、グループ会社が展開する両事業を、東芝が直接管理・統括する体制とすることで、意思決定の迅速化とともに、グループ全体のリソース活用等により事業の拡大を図る。
まず電池事業は、子会社の東芝インフラシステムズ(TISS/神奈川県川崎市)から東芝に移管する。東芝は、TISSから吸収分割により同事業を承継する。
また、TISSの所有するビルソリューション事業の中核を担う孫会社3社を、東芝の直接傘下に移管する。具体的には、ビルソリューション事業において、昇降機事業、照明事業、空調事業をそれぞれ担う東芝エレベータ(神奈川県川崎市)、東芝ライテック(神奈川県横浜市)、東芝キヤリア(川崎市)の株式を吸収分割によりTISSより承継し、3社をTISSが管轄する体制から、東芝が管轄する体制へ変更する。そのため東芝は「グループ経営統括部」を設置し事業を統括する。
電池事業、2030年には4000億円規模に
東芝では、優れた安全性と長寿命、低温性能、急速充放電等の特性を兼ね備えたリチウムイオン二次電池「SCiB™」の製造・販売を2008年3月から行っている。SCiB™はハイブリッド車(HEV)や無人搬送車(AGV)、鉄道向け蓄電池システム等、幅広い分野で採用されている。
その需要は拡大しており、国内では横浜事業所内に新たな製造拠点を新設するとともに、海外では、スズキ(静岡県浜松市)、デンソー(愛知県刈谷市)との合弁によるインドでの工場設立など、アライアンスにより製造能力を拡充している。
また、東芝グループが保有する技術・開発リソースを活用し、チタンニオブ系酸化物を負極材に用いた、高エネルギー密度の電池の開発等にも取り組んでいく。
さらに、東芝グループの幅広い事業分野を生かし、エネルギー分野など、TISS以外の事業領域におけるSCiB™の特性を生かせる成長市場にも注力し、事業機会の拡大を促進し、2030年に4000億円規模の事業にすることを目指す。
なお、鉄道、防衛、受変電等の領域で進めているSCiB™を活用した蓄電池応用システム事業については、従来どおりTISSで継続していく。
照明事業、競争力ある分野に集中
昇降機事業では、グローバル市場が堅調に伸長し、国内外で昇降機の老朽化更新の需要の拡大が見込まれている。今後、海外成長市場でのアライアンスの強化、海外成熟市場と国内でのリニューアル事業の強化により、販売を拡大していく。
また、他社に先行して、建物全体のBIM(Building Information Modeling)データを活用した利便性の高いクラウドサービスにより昇降機のライフサイクル全体を計画・運用・管理する環境を構築し、新規受注拡大を図るとともに、保守やリニューアルへの展開を目指す。
照明事業は、製造拠点の再編を実施するとともに、強みのある施設照明、舞台・スタジオ照明、自動車用電球のほか、成長領域であるソケット型LED等、競争優位性のある領域に資源を集中して、事業を強化していく。
空調事業は、各国の省エネ規制が強化される中、業務用空調を中心に製品ラインアップを拡充し、米国キヤリア社との連携強化、中国での事業強化など、グローバル市場での一層の拡販を実現していく。また、中国の開発・製造建屋建設、富士工場の新技術棟建設、インドでの現地生産開始など、積極的な投資により開発・製造能力の拡充を進めている。
なお、TISSは、ビル・施設向け受変電システムおよびIoTソリューション事業について、従来通り3社と連携して同事業に注力していく。