
開発した感温性高分子ゲルを利用した蓄熱材の動作原理(出所:三菱電機)
三菱電機(東京都千代田区)は11月14日、東京科学大学物質理工学院材料系(早川 晃鏡教授)らの研究チームとともに、水を主成分とする世界最高の蓄熱密度をもつ蓄熱材を開発したと発表した。これまで廃棄されていた低温排熱を回収・再利用し、化石燃料の消費削減が期待できる。
三菱電機独自の分子予測技術を活用し、ゲルの組成と構造を検討
両者が開発した蓄熱材は、水を主成分とする感温性の高分子ゲルを活用し、30℃から60℃の低温下において、562kJ/Lという世界最高の蓄熱密度で蓄えられるという。
開発にあたり、両者は、生体の細胞内で高分子が混み合う「高分子混雑環境」の有無を制御することで、水分子エネルギーの高低を制御し、そのエネルギーの差分だけ蓄熱密度を高くできるのではないかという仮説を立て、三菱電機が独自に開発してきた分子シミュレーション技術を活用し、感温性高分子の組成と構造を検討した。
その結果、高分子濃度が高い組成により、高分子混雑環境の温度制御が可能な、水を主成分とするこれまでにない感温性の高分子ゲルの設計・開発に成功した。
この感温性高分子ゲルは、放熱時(低温時)に親水性であり、水は分離せずに混ざり合い、多くの水分子は感温性高分子ゲル内に高配列で存在するという。化学物質管理促進法の指定物質を使用せず、安全に使用できるのも特徴だ。

開発した感温性高分子ゲルの蓄熱メカニズム(出所:三菱電機)
均質化による大量合成試作にも成功
三菱電機が実施したラボレベルでの合成実験にて、60℃以下の低い蓄熱温度では蓄熱密度(562kJ/L)を実現したほか、Science Tokyo(東京科学大)が開発した合成反応制御技術を活用し、感温性高分子ゲルの均質化を実現、大量合成試作においてもラボレベル同等の蓄熱密度を確認した。
なお、蓄熱密度は、温水が125kJ/L、市販品の脂肪酸が225kJ/L、パラフィンが260kJ/Lといわれる。

蓄熱密度の比較(出所:三菱電機)
両者は今後、感温性高分子ゲルの蓄熱温度範囲の拡大を図り、未利用熱の有効利用を推進するとしている。