
電場アンモニア分解反応のイメージ図(出所:早稲田大学)
早稲田大学は9月12日、同大学理工学術院(関根 泰教授)らの研究グループが、クリーンなアンモニア分解による水素製造の新手法を発見したと発表した。
このプロセスを用いることで、アンモニア分解によるグリーン水素製造が低温かつオンデマンドで行えるようになるという。
アンモニア分解反応に応用、200℃以上の低温化を実現
アンモニア分解反応の低温化に向けて、研究チームは今回、電場触媒反応を応用した。
電場触媒反応とは、電流を流すことで反応を促進させるプロセスのこと。触媒には、半導体性を示す酸化セリウム(CeO2)上に、貴金属のルテニウム(Ru)卑金属である鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)といった金属を乗せたものを活用した。
その結果、電流を流した電場アンモニア分解反応において、125℃という従来では反応がほぼ進行しない低温域で、アンモニア分解率約100%を達成した。
さらに、電場アンモニア分解反応では、従来とは異なり、100℃から200℃の温度域で低温ほど反応速度が上がる特異的な現象を確認。これを受けて、研究チームは、メカニズム解明のためのさまざまな実験を実施し、触媒表面からの窒素の脱離が促進されることを発見した。
これまで、アンモニアから水素を取り出す際には、約400℃以上という高温下でのアンモニア分解反応が必要であったが、今回開発した新手法を適用することで、200℃程度でも反応が進むことが明らかになった。
同反応手法を活用することで、工場やエンジンなどの排熱を利用して水素を得る際の必要設備の小型化や施設内での水素製造が可能になるとしている。

(出所:早稲田大学)
なお、同技術の社会実装に向けては、未だ改善の余地があり、研究グループは今後、実験的手法と計算科学シミュレーションによる検討を図るとともに、ヤンマーホールディングス(大阪府大阪市)とともに、社会実装に向けた課題解決を進めていく。
用語解説
電場触媒反応とは、触媒層に直流電流を流し、電界を印加することで、従来よりも低温で化学反応を進行させる。メタン脱水素反応やメチルシクロヘキサン脱水素反応など、水素を取り出すさまざまな反応を促進させることが報告されている。
律速段階とは、ある化学反応でその反応を構成する素反応の中で最も進行速度が遅く、全体の反応速度を決定する素反応のこと。
【参考】