
m-DAC技術を活用した植物工場のイメージ(出所:JR西日本など)
西日本旅客鉄道(JR西日本/大阪府大阪市)、Carbon Xtract(福岡県福岡市)、スパイスキューブ(大阪府大阪市)は7月3日、空気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)技術を活用した植物工場の実証事業を連携して実施すると発表した。
Carbon Xtractが保有する、九州大学発のナノ分離膜を用いたDAC技術「m-DAC®」と、スパイスキューブの屋内植物工場を組み合わせ、空気中から回収したCO2を用いて光合成を促進し、野菜を育てる実証実験を行う予定。小型分散型のDAC装置によって空気中から回収したCO2をその場で利活用する世界初の取り組みになるという。
この事業は、大阪府の2024年度「カーボンニュートラル技術開発・実証事業費補助金」に採択されて実施する。実証実験は、大阪・関西万博開催期間中に大阪環状線弁天町駅で行う予定。

この事業でめざす姿のイメージ(出所:JR西日本など)
駅や都市部でCO2を回収しながら野菜を栽培・販売
Carbon Xtractが保有するm-DAC技術は、圧倒的に⾼いCO2透過性を持つ⾰新的な分離ナノ膜技術(m-DAC)によって、膜分離により空気中のCO2を回収するもの。世界におけるDAC装置の主流は大型の工場のようなサイズだが、m-DAC技術は、小型で場所を選ばず、輸送も必要のない地産地消型のDACを実現する。
今回の事業では、m-DAC技術を用いた植物工場を駅や都市部各所に設置し、CO2を回収しながら新鮮な野菜を栽培し、都市部でのCO2回収・有効活用を進めることをめざす。野菜は近隣の店舗やレストラン、駅を利用する顧客向けに販売し、顧客に身近に感じてもらうことで新しいCO2削減モデルの社会実装を図る。
親近感を持ったキャラクターを用いたPRを展開
実証実験中は、m-DAC技術を活用した植物工場のめざす世界観について、親近感を持ったキャラクター「McDac™(マクダック™)」を用いたプロモーションを、大阪・関西万博開催期間の実証実験期間中に展開する予定。

プロモーションに使用するキャラクター(出所:JR西日本)
ナノ分離膜を用いたDAC技術で注目
Carbon Xtractは、双日(東京都千代田区)が2023年5月に、九州大学発のナノ分離膜を用いたDAC技術「m-DAC」の実用化に向け、材料ベンチャーのナノメンブレン(福岡県福岡市)と共同で設立した。九州大学(同)も2023年11月に、Carbon Xtractに出資し事業に参画している。
Carbon Xtractは6月、東京応化工業(神奈川県川崎市)とDACを可能とするシステムの早期社会実装に向けた共同開発契約を締結している。東京応化工業は、半導体用フォトレジストにおいて世界トップクラスのシェアを有し、微細加工技術と高純度化技術を活かし、ファインケミカルの分野で事業を展開している。両社の技術・ノウハウを融合させることで、「m-DAC」の量産に向けて開発を加速させていくこととしている。
スパイスキューブは、植物工場に特化したアグリテック系のスタートアップ。植物工場の建設に加え、高機能野菜の生産方法や施設オペレーション、野菜流通販売まで一貫して企業の6次産業化を支援している。