
カルボキシ基を活用したポリエチレンの分解(出所:東京大学)
東京大学は7月4日、同大学大学院工学系研究科らの研究グループがカルボキシ基が少量置換したポリエチレンを対象に、セリウム触媒共存下で可視光を照射することにより、分子鎖が切断され小さな断片に変換(低分子量化)できることを発見したと発表した。同手法の活用により、プラスチック開発の省エネ化や低コスト化が期待される。
ポリエチレンの分解・再利用にかかる温度を大幅に低減
研究グループは今回、ポリエチレンそのものではなく、ポリエチレンに少量のカルボキシ基を含む高分子である「カルボキシ化ポリエチレン」のカルボキシ基を分解の足がかりとして応用するという着想の下、研究開発を実施した。
具体的には、カルボキシ化ポリエチレンに適用することで、ポリエチレンの鎖上に炭素ラジカルを発生させ、その高い反応性を活用し鎖を切断する方法を検討した。
さまざまな反応条件を検討する中、少量のセリウム塩共存下でLEDランプの光(青色)を当てると、カルボキシ化ポリエチレンが溶解も融解もしないアセトニトリル溶媒中、80ºCの条件でも反応が進行し、分子量が1万程度から500程度まで低下することが明らかになった。
この反応は水中でも進行し、さらに、カルボキシ化ポリエチレンと少量のセリウム塩をすり混ぜて混合したものであれば、溶媒を必要とせず粉末に光を当てるだけで進行することが判明した。実験では、厚み0.1mmのフィルムを用いた場合でも反応は進行し、低分子量化することも確認された。

カルボキシ化ポリエチレンフィルムの分解反応(出所:東京大学)
既存のポリエチレンの分解・再利用の技術は、一般には300℃から500ºCの高温を必要とし、学術研究においても150ºC程度が限界だったが、今回開発した手法を用いることで、80ºCまで大幅に低減でき、ガス化や油化などに適用することで、エネルギーコストに優れたケミカルリサイクルの実現につながるとしている。
なお、今回の技術開発は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(ERATO)「野崎樹脂分解触媒プロジェクト」の支援により実施されたもの。
【参考】