
活性酸素有機物分解装置「Polaris3.0」(出所:WEF技術開発)
廃棄物リサイクル技術開発などを手がけるベンチャー企業のWEF技術開発(滋賀県大津市)は7月2日、同社の特許技術「大気中生成活性酸素」を活用し、もみ殻からバイオ炭シリカを製造したと発表した。
独自技術でもみ殻を有効利用、水田のメタン発生を抑制
水田は、水を張ることで土中が嫌気になりメタン菌が活性化し、メタンが大量に発生する。また、近年は温暖化による稲のストレス増加による減収量、品質低下が課題となっている。特に、稲は高温に弱いため、有効な高温対策が求められる。
こうした状況を受けて、同社は、農業廃棄物であるもみ殻に着目し、利用水田メタン発生に有効なバイオ炭と稲の高温対策として期待できる非結晶シリカの同時製造を目指した。
製造に用いた大気中生成活性酸素は、活性酸素と反応熱で有機物分解し、無機物を残すWEF独自の技術。250℃から300℃程度の低温で処理し、完全非結晶化が可能。処理時間は3時間前後で、必要な機器は活性酸素投入ファン(50W×2台)だけで賄える。また、もみ殻処理しない時期は、防草・遮熱シートなどの分解処理に利用できるというメリットもある。
通常は、もみ殻中の80%近くのセルロースの原子結合を活性酸素が分解し、最終的には無機物のシリカ(ケイ素を構成元素とする物質)のみとするが、今回の開発では、早目に処理を停止することでバイオ炭として残した。

完成した「バイオ炭シリカ」(出所:WEF技術開発)
滋賀県立大、バイオ炭のメタン抑制効果を立証
滋賀県立大学 環境科学部は、バイオ炭を用いた水田稲作農法の科学的検証を行った。
その結果、市販のもみ殻くん炭は、水管理の有無に関わらず、メタン抑制効果が稲作期間を通して期待できることが示された。また、くん炭の混合量を最低250kg/10aを混合することで、十分メタン抑制効果が期待できること、混合量を増やすことでさらなる抑制効果がより高まることが論文で発表された。

処理前のもみ殻(出所:WEF技術開発)
毎年67万トンのもみ殻が廃棄
稲は、一般的にケイ素を地上部乾燥重の10%ほど集積する。もみ殻中の成分比率としては、80%弱がセルロースなどの有機物で、残り20%強の無機物は大部分が非晶質シリカと僅かなミネラルで構成される。
「もみ殻バイオ炭シリカ米」栽培の効果として、同社は以下のようなものを挙げている。
- 水田メタン発生抑制と埋炭の効果により、カーボンプライシングで大きなCO2販売量が見込める
- 気候変動ストレスに打ち勝つ米の栽培で、収量、品質を確保する
- リン肥料の使用量を削減できる
- 稲作廃棄物を削減する
国内では、毎年約200万トンのもみ殻が排出され、そのうち67万トンが破棄されている。今回のもみ殻バイオ炭シリカ米を活用することで、温暖化と食糧の課題解決につながると、同社は説明する。