国は日本発のペロブスカイト太陽電池であることから、諸外国に先駆け量産技術の確立、生産体制の整備、需要の創出に期待を寄せている。しかし、国内企業は自社事業優先の戦略に沿って、固有の技術開発を進め、薄膜(有機、ペロブスカイト)太陽電池の新市場創出へ邁進している。
日本は世界最高水準に位置し大型化や耐久性の分野でリード
ペロブスカイト太陽電池は、ヨーロッパや中国を中心に技術開発競争が激化している状況にあるが、日本は世界最高水準に位置し、特に製品化のカギとなる大型化や耐久性の分野でリードしている。
こうしたことから、グリーンイノベーション基金において、「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」(498億円)を立ち上げ、2030年の社会実装を目指している(目標:2030年度までに一定条件下での発電コスト14円/kWh以下)。
ペロブスカイト太陽電池の主要原料のヨウ素は、日本が世界生産の30%を占めるなど、各原材料の国内調達が可能であり、特定国からの原料供給状況に左右されない強靭なエネルギー供給構造の実現につながる。
加えて、太陽光発電市場は世界的にも導入量が毎年右肩上がり(2021年:176GW、2022年:234GW)で増加しており、世界的な市場の獲得も期待される。
シリコン系太陽電池では、欧州や中国等での導入が加速化し、海外市場が猛烈なスピードで急拡大する中で、市場の拡大を見通した設備投資の不足や厳しい価格競争により、日本企業は世界市場のシェア獲得を逃した苦い経験がある。
国は、日本発のペロブスカイト太陽電池であることから、中国や欧州など諸外国でも研究開発競争が激化している状況にあるが、投資の「規模」と「スピード」でも競争し、諸外国に先駆け、早期の社会実装を進め、量産技術の確立、制体制の整備、需要の創出に期待を寄せている。

厚さ0.003mmの超薄型有機太陽電池(理化学研究所)
開発競争にしのぎを削る国内メーカー
たとえば、積水化学工業は現在、30cm幅のペロブスカイト太陽電池のロールtoロールでの連続生産が可能となっており、耐久性10年相当、発電効率15%の製造に成功している。今後、1m幅での量産化技術を確立させ、2025年の事業化を目指している。すでに建物壁面への実装工事も行われるなど、実証の取組も進捗が見られており、昨年末には、世界初となる1MW超の建物壁面への導入計画が公表された。
東芝では、独自のメニスカス塗布法を応用して作製したフィルム型の同電池(面積703cm2)において、大面積のものとしては世界最高のエネルギー変換効率(16.6%)を記録した。塗布法を用いることで、エネルギー変換効率の向上と生産プロセスの高速化を両立することが可能になり、現在、高効率かつ低コストなフィルム型の同電池の実用化に向けて開発を進めている。
カネカは、ポリイミドを基板に用い、薄膜シリコン太陽電池の量産技術を活用することで世界最薄水準である約10μm(1μmは100万分の1メートル)厚の超薄型ペロブスカイト太陽電池を開発している。また、この開発を通じてフィルム型ペロブスカイト太陽電池における世界最高水準である20%に迫る変換効率を実現した。
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