パナソニックのペロブスカイト太陽電池開発 ガラス建材一体型に絞って製品化

ペロブスカイト太陽電池開発、特殊性を追求する日本メーカー その狙いとは

ペロブスカイト太陽電池開発、特殊性を追求する日本メーカー その狙いとは(2ページ目)

トヨタもペロブスカイト開発に出資

スタートアップ企業エネコートテクノロジーズは、2023年4月時点でモジュール変換効率19.4%というフィルム型ペロブスカイト太陽電池の開発に成功している。次世代技術として期待の高い車載用ペロブスカイト太陽電池の実用化を目指して、トヨタ自動車と共同で取り組むことにも合意し、開発を開始した。

トヨタは「トヨタ環境チャレンジ 2050」の実現に向けたさまざまな取り組みの中で、省エネルギーやエネルギー多様化の観点からカーボンフリー電力の自給自足を目指し、結晶シリコンセルを用いた車載太陽光発電システムの実用化を進めており、さらなる発電効率向上や低コスト化を目指している。

パナソニックでは、ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池の開発を進めている。まち・くらしに調和する「発電するガラス」と位置づけ、実用サイズのモジュールとして世界最高レベルの発電効率17.9%を達成している。

シャープが取り組むペロブスカイト太陽電池は、タンデム型で30%以上の変換効率を実現できる水準に達し、大面積化した用途に向けたタイプについては、変換効率を20%程度には高めておきたいとしている。大面積化を志向した用途に向けては、880mm×660mmのガラス基板に形成したセル(発電素子)を昨年末に公開している。

理化学研究所は超薄型・超柔軟・耐水を開発

理化学研究所では、水中でも駆動可能な耐水性と超柔軟性を備えた超薄型有機太陽電池の開発が進んでいる。作製された厚さ3μm(0.003mm)の超薄型有機太陽電池は、水に4時間浸漬した後もエネルギー変換効率の保持率が89%であり、水中で30%の圧縮歪(ひず)みと復元を繰り返す機械的な変形を300回加えた後も、エネルギー変換効率の保持率が96%という高い安定性を示す。さらに、水中で浸漬した状態で60分以上の連続駆動を達成している。

通常の太陽電池は、光が斜めに入ると発電効率が低下するが、折り曲げ可能な超薄型有機太陽電池の特長を生かして、700ナノメートル(1nmは10億分の1メートル)の周期で微細に波打った状態で層をつくり、光の入射角度の影響を受けにくく十分な発電を可能としている。超薄型有機太陽電池は、その柔軟性と軽量な性質により、ウェアラブルデバイスの潜在的な電源として期待されている。

種類別ペロブスカイト太陽電池の特徴と活用用途

用途や目的に応じてさまざまな市場の拡大が想定されるペロブスカイト太陽電池

軽量でフレキシブルなタイプは、ビルの壁面や耐荷重が小さい工場の屋根などにも設置が可能で、太陽光発電の導入量の増加が見込まれる。すでに開発に一定の進展が見られ、今後は量産化に向けた製造技術の開発を進めるとともに、サプライチェーン構築と初期需要創出がカギとなる。屋内・小型タイプは、IoTデバイスなど比較的小型な機器類に貼ることができることから、新たな市場への展開が期待できる。

また、超高効率型は、設置面積の制限などから高いエネルギー密度が求められる分野、たとえば交通や航空などの面でも利用が期待されている。低コスト化や、高い耐久性など、量産化へのハードルはまだ高い状態だが、将来的な市場ニーズは高いと考えられている。

「次世代型太陽電池の早期社会実装に向けた追加的取組について(2023年8月)」(出所:資源エネルギー庁新エネルギー課)

記事出所: 『環境ビジネスオンライン』 2024年4月24日 出典

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