
「太陽光超還元」技術の概念図(出所:ダイセル)
ダイセル(東京都港区)は12月11日、金沢大学とともに、可視光照射によるダイヤモンド表面からの電子放出を利用したCO2還元に成功し、革新的カーボンリサイクル技術として実装化の検討を開始したと発表した。
爆轟合成技術を活用した、独自のダイヤモンド固体触媒
ダイヤモンドはホウ素を高濃度に含むことで導電性物質となる。この作用を利用し、電気化学分野では、さまざまな応用研究が行われている。一方で、ダイヤモンドをCO2の電解還元に用いる場合は、深紫外光などの高エネルギー光の照射が必要不可欠となる。
ダイヤモンドに対し、太陽光に6%程度しか含まれない紫外光を照射することで、周囲のCO2が還元されることは広く知られていたが、両者は今回、太陽光に最も多く(約50%)含まれる可視光を用いて同現象を世界で初めて確認した。
研究で使用されたのは、爆轟(ばくごう)法で合成したナノダイヤモンドを基軸とした独自のダイヤモンド固体触媒。ダイセルの爆轟合成技術と、金沢大学の化学気相成長(CVD)技術を組み合わせることで、放出された電子によってCO2をCOに還元した。
ダイセルは、同技術(太陽光超還元(R))は、触媒寿命の長さや所要電力の少なさという特徴があり、カーボンネガティブ社会の実現を大幅に近づける革新的カーボンリサイクル技術として期待できるとしている。
今後は、自社の化学プラントで、工場から排出されるCO2を各種化工品原料となるCOに還元する実証実験を行う予定だ。
なお、今回の研究成果は2023年12月1日、国際学術誌「Carbon」にも掲載された。