
新たに大井競馬場のきゅう舎に導入するKID SYSTEM(出所:東京シティ競馬)
東京シティ競馬(TCK/東京都大田区)は11月17日、競走馬が排出する馬糞や使用済みの敷料(藁などの混合物)を微生物が処理する有機物処理機「KID SYSTEM」を新たに導入し運用を開始したと発表した。焼却処理と比較してCO2の排出が92%削減できるほか、給水・排水設備のない場所でも使用可能だという。
青果市場などで活躍、微生物の力でごみを残さず、ほぼCN
「KID SYSTEM」の製造元は日本発酵(東京都中央区)で、微生物を用いた分解処理により有機物を減容させ、99%以上が水蒸気や窒素などに変わり消滅する。焼却処理と比較し92%以上のCO2排出削減につながり、ダイオキシンのような有害物質も発生しないほか、給排水不要で下水汚染の問題もない。
同処理機は主に青果市場などで活用されてきたが、同社が検証を重ねたところ、競走馬の馬糞などに対しても良好な状況が確認できたため、競馬場において運用を開始した。
今回の導入によって、大井競馬場から排出される馬糞などのうち1日あたり約100リットルの処理が可能。今後、運用状況を確認しながら処理量を増量し本格的な導入を目指すとともに、競馬場内の飲食店から排出される生ごみの処理にも活用していきたい考えだ。
同社はこれまで、大井競馬場のきゅう舎から出た馬糞などを、千葉県の船橋市や市川市で栽培されている人参・梨の堆肥やマッシュルーム栽培の菌床として活用してもらうなど、原則としてリサイクルするよう処理していたが、環境に配慮しつつ将来的にも安定的して馬糞を処理する方策を検討してきたという。

有機物を入れる前の「KID SYSTEM」の内部(出所:東京シティ競馬)
自然界の生分解を利用し、水も不要 災害対策にも?
食物残渣を構成する水分・タンパク質・炭水化物・脂肪などの有機物は水・アミノ酸・糖質・脂質などで構成されており、自然界ではこれらが生分解されることで水蒸気や炭酸ガス、窒素になり処理される。
「KID SYSTEM」は、この自然界で微生物が行っている生分解を利用し、より早く・効率的にごみや排泄物を処理する。機械に投入した食物残渣・脱水汚泥・し尿・畜糞・害獣の死骸を機械から取り出すことなく、独自で培養した微生物群の力で99%減容させる。水を使用しないため給水・排水設備のない場所でも使用可能で、水質汚濁防止法・下水道法に抵触する懸念がないというメリットもある。