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日機装(東京都渋谷区)は10月4日、水素航空機向け液化水素ポンプの実液試験に成功したと発表した。同社は現在、川崎重工業(兵庫県神戸市)から液化水素ポンプ開発の委託を受けており、2025年度中の納入を目指す。
今後はさらなる小型・軽量化と長寿命化を図る
この試験は6月、JAXA角田宇宙センター(宮城県角田市)で実施された。モータ一体型ポンプを液化水素(マイナス253℃)に満たされた極低温の状態(浸漬状態)に置き、稼働時の安定性などを検証した。
その結果、同社が開発した液化水素ポンプは、極低温の状態においても、小型電動モーターが高速回転し、液化水素を送り出すことが確認された。
今後は、同実験で得られた結果を分析し、ポンプのさらなる小型・軽量化と長寿命化を図り、試作機の改良を行う予定だ。

実液試験の様子(出所:日機装)
航空分野の脱炭素の切り札、水素航空機への期待
燃焼時にCO2を排出しない水素を燃料とする水素航空機は、航空分野の脱炭素に向けた次世代の航空機として有力視されている。その燃料となるのが液化水素だ。水素は液化すると気体の800分の1まで体積が圧縮する特性があり、液化水素は燃料に最適である。
日機装が開発中の液化水素ポンプは、液化水素を燃料タンクからエンジンポンプへと昇圧して送液するブースタ型ポンプ。航空機用ポンプは小型・軽量化が必須であり、また水素は低密度で昇圧しにくいことから、同社では、従来のポンプ設計よりも高速回転の電動モーターの開発を目指している。
日機装は、特殊ポンプや航空機用部品などの製造を手がける大手工業メーカー。特に、産業用特殊ポンプ開発では、LNG(マイナス163℃)の極低温流体にも対応できるなど豊富な製造実績がある。
川崎重工は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」に「水素航空機向けコア技術開発」を提案し、2021年11月に採択された。日機装は川崎重工から再委託を受け、液化水素ポンプ開発を担っている。