
大和ハウス工業(大阪府大阪市)は、オーダーメイドで工場や倉庫などに設置でき、顧客の多様な事業計画に対応できる植物工場システム「agri-cube ID(アグリキューブ・アイディー)」を10月1日から全国で販売する。
agri-cube IDは、三協立山(富山県高岡市)と共同開発したもの。同社との提携により、植物工場の「建設」から「栽培・運営サポート」までワンストップサービスを提供する。
小規模な植物工場による栽培実証・事業を検討する顧客から、大規模な植物工場を希望する顧客まで幅広い事業計画に対応する。さらに、将来の事業規模拡大を見据えた工場のトータルプランニングも提案する。
agri-cube IDでは、野菜の成長に不可欠な「風・光」がすべての野菜に均一量当たるよう、三協立山が独自に開発した「送風システム(特許出願中)」と、最適配置されたLED照明を採用し、栽培棚ごとの生育ムラを抑えた。あわせて同社が開発した、野菜の健全な成長を促す養液を自動制御する「養液管理システム」を導入。これらをエアコンなどの設備機器と組み合わせることで最適な栽培環境を整備し、「高歩留・高収量・高回転」を実現するという。フリルレタスは最短32日間(従来品は42日間)で促成栽培可能となった。
また、三協立山による「栽培サポートプログラム」(有償)をパッケージ化した。このプログラムは、三協立山の6年間にわたる植物工場運用(栽培から販売まで)の経験で培った、栽培・工場運用に関する知識と技術を顧客へ提供するサービスだ。建設確定後の工場管理者を対象にした事前指導、植物工場竣工後の現場教育を基本とし、実運用開始後3カ月、6カ月、1年、2年経過時の定期サポートなど、充実したプログラムで顧客をサポートする。
基本モデルで本体設備価格30万円/m2~

生産可能な品目は葉菜類で、リーフレタス、バジル、ホウレンソウなど多様な品種栽培が可能だ。販売価格は、基本モデル(約1,300m2)の場合、本体設備価格30万円/m2~(税別)。本体設備・仕様は、断熱パネル(室内高3m)、栽培棚(アルミ製・標準5段)、栽培プール、栽培用LED照明、空調設備、送風システム、養液管理システムなど。なお、この商品は屋内設置を前提としており、建屋本体は含まれていない。
新たな農業の形として期待
国内の農業分野では、天候・季節・地域に左右されず、誰でも簡単に従事できる新たな農業の形として「植物工場」が期待されている。
大和ハウス工業は2012年、独自開発した小型の植物工場ユニット「agri-cube E」「agri-cubeS」を発売。その後、大規模植物工場への事業化ニーズの高まりを受け、2011年から植物工場の研究を行っていた三協立山と、2017年4月より、大量生産できる大規模植物工場をテーマとした共同開発を開始した。2018年4月、両社は販売に関する業務提携契約を締結、今回の大和ハウス工業による販売開始に至った。